CSRからCSVへ

最近、CSVという略語をよく耳にするようになりました。

企業の方と復興支援について会話していると”これって、CSVだよね”という感じで使われています。ただ、その意味するところがあまりよく理解されていないように思うので、CSVとCSRがどう違うのかについて整理したいと思います。

CSV:Creating Shared Values(共通価値の戦略)という考え方を提唱したのは、戦略論で有名なマイケル.E.ポーターです。
従来、企業は経済的価値を生み出すことで社会の進歩に貢献すると理解されていました。ところが、米国発金融危機を通じて”行き過ぎた資本主義”への批判が拡大しました。その中で注目されてきたのが低所得層を対象としたBOPビジネス(注)や社会問題を企業の手法で解決しようというソーシャル・ビジネスでした。これらに共通するのは、経済的価値と社会的価値を同時に生み出そうとする試みです。

「共通価値(Shared Values)という概念は、経済的価値を創造しながら、社会的ニーズに対応することで社会的価値も創造するというアプローチであり、成長の次なる推進力となるだろう。・・これまでの資本主義の考え方は、『企業の利益と公共の利益はドレード・オフである』『低コストを追求することが利益の最大化につながる』といったものであり、依然支配的である。しかし、もはや正しいとは言えず、また賢明とは言いがたい。共通価値の創造に取り組むことで、新しい資本主義が生まれてくる。」 引用:マイケルE.ポーター「共通価値の戦略」(『ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー2011年6月』)

CSRは企業の社会的貢献活動として定着しつつあります。
しかし、大きな限界があります。それは、企業の経済活動とは切り離された”社会貢献活動”であり”非採算部門”の活動であるという点です。
それに対して、CSVは”社会問題の解決を経済活動を通じて実現する”という点がCSRと大きく異なります。企業は利益を上げる能力があるからこそ社会問題を解決できるという立場です。
そんな夢みたいなことができるのか!と思われそうですが、今年初めに来日したM.E.ポーターは、日経新聞とのインタビューで興味深いことを語っています。
私がなるほどと思ったのは、「50年程前、日本では少なくない数の企業がCSVの考えを持っていました。第二次世界大戦後の再建の過程において、当時の起業家の多くは資本主義を通じて国家を再建しようと企業活動を行っていたのです。戦後初期の経営者らは国家再建のために企業活動を行っていました。.....戦後の復興を果たし市場を整えていくにはどうしたらいいかと企業経営者は考えたと思います。戦後間もなく食糧不足も政府ではなく企業、資本主義、資本家によって解決されていきました。」という内容です。
戦後復興期において、社会問題を解決していったのは、政府ではなく企業経営者だった。
震災からの復興も、ビジネスが主導する!

この記事は、以下のURLで読むことができます。
社会問題の解決と利益の創出を両立 企業に新たなビジネス機会をもたらすCSVとは(上) ハーバードビジネススクール マイケル・ポーター教授
http://bizacademy.nikkei.co.jp/feature/article.aspx?id=MMACz2000007012013
社会問題の解決と利益の創出を両立 企業に新たなビジネス機会をもたらすCSVとは(下)
http://bizacademy.nikkei.co.jp/feature/article.aspx?id=MMACz2000015012013&waad=j9zBniRm
注:BOPとは「Base of the Pyramid」の略であり、最も収入が低い所得層を指す言葉で、約40億人がここに該当すると言われる。BOPビジネスは、企業の利益を追求しつつ、低所得者層の生活水準の向上に貢献できるWin-Winのビジネスモデルに特徴がある。
http://www.mitbac.org/ブログ/2013年7月/
より再掲