経営資源としての”情報”再考

情報は、ヒト・モノ・カネに次ぐ「第四の経営資源」として認識されています。
コンピュータが企業で使われるようになって50年余、企業経営において、情報の価値はどのように変わってきたのでしょうか?
情報の価値について考えると、私たちを取り巻く情報の”量”は格段に拡大していることに気づきます。
ビッグデータ、情報爆発の時代、というキーワードは普通に使われるようになっています。
「量は質に転化する」という弁証法のテーゼに習うまでもなく、情報の”量”的な変化は、情報の”質”的変化をもたらしています。それは、経営に於ける「情報の役割の質的変化」をもたらしています。
今回は、企業経営に於ける情報の役割を再検討したいと思います。

■ 人の仕事の代替えから、意思決定支援へ
企業など組織に於ける情報の役割は、人の仕事を代替えする役割(省力化)から意思決定の支援、さらに、人と人とのコミュニケーションを支援する役割へと発展してきました。これらは情報のフローが組織のオペレーションを支援し、組織運営の高度化をもたらしてきた歴史としてとらえることができます。
別の表現をすると、「産業の情報化」として、「モノやサービスの生産において、生産要素としての情報の投入量が増え、その効果として、生産物の品質・性能、および付加価値が高まる」ことが進化してきた歴史と見ることができます。
情報技術の進歩とともに情報の活用法は高度化が進み、経営上の意思決定に貢献してきました。DSS(意思決定支援システム)やデータマイニング、BI(ビジネス・インテリジェンス)など経営の意思決定支援に情報を活用する試みは発展を続けてきました。
「ビッグデータの時代」というのは、このような情報活用の高度化の延長上にあるのでしょうか、それとも”質的”変化を伴うものでしょうか?
私は、ビッグデータの時代は、経営に於ける情報活用の質的変化をもたらしていると見ています。ポイントは、情報の集まり方のリアルタイム性と情報の包括性(すべての情報が集まること)にあります。

■ 情報のフローを制する者が、競争を制する時代へ
ビッグデータの特徴は、その量に加えて発生種類の多様性とリアルタイム性にあります。さらに、それらの情報が多くの組織や個人によって共有が進むことも予想されます。これからの情報は、種類の多様性、リアルタイム性、共有というのがキーワードとなります。
従来の情報による意思決定支援は、過去のデータを扱うのが一般的でした。
これからはリアルタイムに発生するデータが中心となります。複数の組織間でのデータの共有もすすむでしょう。
経営資源としての情報は、その組織が固有の情報を保有していることが競争優位につながると見られていました。ところが今日では、その組織がストックとしての情報をどれだけ保持しているかが重要ではなく、どのような情報にアクセスしているかがポイントとなります。その情報からどのような知見を引き出す組織能力を有しているかが、他の組織との差別化のポイントになってきます。
情報をストックするのでは無く、情報のフローを制する者こそが競争優位を獲得できるのです。

<参考文献>
・島田達巳、高原康彦著「経営情報システム」(日科技連出版社)
・A.マカフィー、E.ブリニヨルフソン「ビッグデータで経営はどう変わるか」
(DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー:2013年2月)
ITコーディネータ京都 2013/8/5付メールマガジンより再掲