事務管理再考

今回は、事務管理について書きたいと思います。
「事務管理」というのは、若い方にはなじみのない用語ですね。
コンピュータがオフィスに導入され始めた頃には注目された用語ですが、最近はほとんど聞かなくなりました。古くから情報システム部門や管理部門の仕事をされていた方は、「月刊事務管理」という雑誌をご存じかと思いますが、すでに、1991年に名称変更になっています。大学の教育科目でも、経営系の学部では「事務管理論」がかってはありましたが、今ではほとんど見ることがありません。
今、なぜ事務管理を取り上げるか。その理由は、最近注目されるビジネス・プロセス改革の方向と、かなり前に議論されていた事務管理の役割に共通項を感じるからです。事務管理に関する議論を整理すると、ビジネス・プロセス改革の新たな方向性が見いだせるのではないかと考えるからです。

事務管理とは何か?
最近では、”死語”になりつつある事務管理ですが、その意味を再確認します。
事務を狭い意味で捉えると「読み、書き、ソロバン」に示される「書く、話す、計算、分類・整理」などの動作が組み合わさった作業との理解になります。それが、オフィスへコンピュータが導入され始めた頃から事務管理=情報処理へと変化していきます。つまり、事務管理は作業的な側面での理解から、情報の蓄積と活用を通じて経営管理の高度化を図る方向として事務管理が発展していったのです。
事務管理のとらえ方として、工場での動作管理や時間管理から生まれた伝統的管理論をオフィスに適用した作業管理的な視点で事務管理を捉える見方と、情報を軸に据えた経営管理的な視点で事務管理を捉える見方の、2つがあったといえます。

事務の本質
それでは、そもそも事務とは何でしょうか?
事務の本質を巡って、「結合機能説」と「構成要素説」という2つの理論があります。
・結合機能説:事務は、組織体における営業や生産など各部門の調整と結合を担い、各部門の仕事がうまく行われるよう援助するものである。
・構成要素説:事務は、生産、販売、購買などの機能と並列に捉えられるものではなく、各機能の遂行手段である。
私はこの2つの理論は対立するものではなく、事務管理が持つ2つの側面を説明するものだと思います。いずれの主張においても、事務管理無くして、組織体における主要機能である生産、販売、購買などの機能は、効率的に遂行できないといえます。
事務管理を分かり易く表現すると、「三ム、四ク」に事務を行うこと、といえます。「三ム」というのは、ムリ・ムダ・ムラを無くすこと、「四ク」というのは、ハヤク・タダシク・ラクニ、ヤスク事務を行うことです。

事務とビジネスプロセス
事務管理という考え方に最も近い用語は、ビジネスプロセスだと思います。ビジネスプロセスという見方は、リエンジニアリングで有名なハマー&チャンピーによって初めて提唱されました。ビジネスプロセスとは「1つ以上のことをインプットして、顧客に対して価値のあるアウトプットを生み出す行動の集合」であるとハマー&チャンピーは定義しています。少し抽象的な表現ですが、事務管理論で検討されていたのと同一の課題を提示しています。

私たちITコーディネータは、中小企業の経営者に対して「ビジネスプロセスの改革とあわせてITを導入しないとIT投資の効果は生まれない」と言い続けてきました。最新のITを活用すれば、従来は困難であったようなビジネスプロセスを実現し、顧客に新たな価値を提案することも出来るようになりました。
事務管理に関する議論は、コンピュータのオフィスへの導入にあわせて、「情報処理」という用語に置き換わり、事務管理は”死語”となりつつあります。しかし、今まで整理してきたように事務管理の役割は、情報処理へと置き換わるものではなく、ビジネスプロセスの役割と同一だといえます。
ビジネスプロセス改革の方向は、企業などその組織体の目的によって規定されます。「顧客へ新たな価値を提供する」との視点に立てば、ビジネスプロセス改革の方向は、単に効率化・標準化ではなくなります。
20年も前に事務管理論で議論されていたテーマを、今日のIT環境の中で再検討するのも意味のあることだと思います。

参考文献:『事務管理論』島田達巳:編著 創成社

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