オンラインでの授業を経験して

皆様、緊急事態宣言下でいかがお過ごしでしょうか?
このメルマガが届く2020年5月4日は宣言が継続しており、多くの方は自宅待機、在宅勤務中だと思います。

私の所属する大学院は、4月の授業が延期となり5月7日からe-learningによる授業が始まります。オンラインによる授業配信の仕組みは整っており実績もありますが、実際に運用してみると様々な課題が生まれてきます。

今回は、オンライン授業での課題について、私自身の経験も踏まえて書くことにします。”授業”と言うと教育関係者固有のテーマと思われてしまいますが、”サービス提供方法の変更”、あるいは”働き方の変更(働き方改革ではなく)”と読み替えていただければ多くの読者の皆さんに共通する課題となるように思います。

■ これまでのオンライン授業

私は、10年ほど前からある大学院のMBAコースをオンラインで行った経験があります。そのときは、LMS(ラーニングマネジメントシステム)を軸に講義動画の配信、非同期でのオンラインチャット、一部の講義のリアルタイム配信、これらの組み合わせでした。
講義のリアルタイム配信(Q&A含む)は、ネットワーク環境の制約で限定されたものでした。講義を配信する側の環境整備は出来ても、受講生側の環境はばらばらで、教室での講義のように双方向で運営するというのはほとんど不可能でした。

私の現在の大学院では、受講生が札幌・東京にもいる関係で教室の講義をリアルタイムで配信しています。講義の録画も取り、遅れての視聴も可能にしています。これらは専用の設備、専用の回線で運営しているため環境は安定しています。

これらの授業実施方法は、オンラインと言いつつも「教室での授業をそのままネットで配信」したに過ぎません。授業というサービスの中身は変更せず、その提供方法を変えたに過ぎないと言うことです。

■ 現在のオンライン授業環境

オンラインで授業を実施する環境をハード・ソフトウエア、ネットワークなどで見ると長足の進歩があります。個人的な感想を言いますと、ネットワーク環境さえ安定していれば、対面と同じようにオンラインでの授業は行えるように感じます。Zoomなどのようなオンライン会話ツールをはじめ、資料の共有、グループ内コミュニケーションなどのツール類を活用すれば、不自由なく授業は進められます。

私が3月に行ったオンライン授業の経験を少し書きます。

受講生は大学院生(ほとんどが留学生)20名程度で、ITとビジネスに関する専門科目を10回の集中講義で行いました。学生達は基本的に自宅からの受講、私も自宅からの授業配信を行いました。
使用したツールは大学院標準のLMS(ラーニングマネジメントシステム)とZoomです。講義資料の提供、課題の提出、講義に関するQ&AはLMS上で行い、授業はZoomでリアルタイム配信しました。IT専門職大学院生ということもあり、ツールの利用に関するトラブルはほとんどありませんでした。自宅のネットワーク環境に不安のある学生は代替えの場所を確保して受講したようです。

オンラインで授業を行った感想を一言で言うと、「こんなに簡単にできるの?」です。意外に簡単だったというのが実感です。事前に授業中のトラブルを想定して準備を行いましたが、大きな問題は発生することなく授業を終えることが出来ました。

念のために、学生達に匿名でアンケートを実施しましたが、好意的な反応がほとんどでした。双方向のコミュニケーションが取りづらいなど改善すべき点は多くありますが、学生達はオンラインでの授業にほとんど違和感はなかったようです。

■ 教育はどう変わるか?

多くの大学でこの4月からオンライン授業が実施されています。
初めての経験のため多数のトラブルが報告されていますが、教員・学生ともに工夫を凝らして授業を準備しています。対面の授業に比べて限界が指摘されることが多いですが、私は逆に新しい教育のありようが生まれるのではと期待しています。

ハード・ソフト・ネットワークに関してはかなりのレベルが準備できるようになってきたのですから、後はそれをどう使いこなすかにかかってきます。

「教室に集まっての授業」は教育を提供する選択肢の1つにすぎない、という点がより進行するのではと思います。

■ 新型肺炎という現代の黒船

話は変わりますが、先日あるテレビ番組で「新型肺炎は現代の黒船だ」という意見を聞きました。日本のAI研究の第1人者である東京大学の松尾豊氏の発言です。新型肺炎という現代の黒船=外圧によって日本は変わることを余儀なくされている。新たなイノベーションが起こることを期待するという内容でした。

新型肺炎を乗り切った後、どのような大学での教育の姿が生まれるでしょうか?
現状で予想できることは出来ないですが、ただ一ついえることは、元の形には戻らないだろうと言うことです。元の形に戻りたいという慣性は働くでしょうが、環境は変化しています。元に戻る”場所”は無いと思うべきでしょう。

この災害を乗り切った後には、新しい形が生まれてくると予想します。これはビジネスの有り様や社会全体でも言えるのではと思います。

<参考文献、URL>
・【大学関係者必見!】《大学生ネット環境の実態》オンライン授業におけるアンケート調査(昭和女子大学・高木ゼミナール)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=11&v=3p6AMa6lV8w&feature=emb_logo&fbclid=IwAR3ZSofXtaicZ_1IQp4tIRBBa29wUsDXapzlixNFwbURCUd6RIwiiAmHuzo

NPO法人ITコーディネータ京都メールマガジンから転載

https://www.itc-kyoto.jp/2020/05/04/%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%8E%88%E6%A5%AD%E3%82%92%E7%B5%8C%E9%A8%93%E3%81%97%E3%81%A6-%E8%97%A4%E5%8E%9F-%E6%AD%A3%E6%A8%B9/