デジタルガバナンス・コード説明会に参加して ~中小企業のDX推進の課題~

先日、経済産業省主催の「デジタルガバナンス・コード」実施の手引き地域別説明会に参加しました。
「デジタルガバナンス・コード」は、一般には余りなじみがない用語ですが、中小企業のDX:デジタル・トランスフォーメーションを推進するにあたって重要な考え方ですので共有したいと思います。

デジタルガバナンス・コード2.0とは?

経済産業省のデジタルガバナンス・コード2.0は2022年9月に策定された、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための指針です。経営ビジョンの策定、デジタル人材の育成・確保など、企業がDXを推進するために必要な事項を10の原則としてまとめています。
デジタルガバナンス・コード2.0は、2020年に策定されたデジタルガバナンス・コードを更新したもので、デジタル人材の育成・確保の重要性を明記、中堅・中小企業向けの取組を支援するなどが追加されています。

参考:「デジタルガバナンス・コード2.0」を策定しました:経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220913002/20220913002.html

DXとは単なるデジタル化を指すのでは無く、新たな顧客価値を創造していくことであり、そのために組織や企業文化を変革していくことに他なりません。
DXを推進する上で、“デジタル化”は2つの側面で捉えられます。ひとつは、新たなデジタル環境の登場による社会環境・企業の競争環境の変化です。新しいタイプのサービスが登場し、既存ビジネスが危機に陥っている例が多くあります。
もう一つは、デジタルを活用した企業の変革です。新しいデジタルの登場は、企業にとって新しいサービスや商品を生み出すことを可能にしています。しかし、デジタルを活用した新しい商品やサービスを生み出すためには、企業自身が変わることが求められます。新たな企業ビジョンやビジネスモデルを構想し、それを実現するために会社が変わっていくことが求められます。商品・サービスや仕事のやり方はそのままでデジタル化することは比較的容易になってきましたが、新たな顧客価値を創造していくことは容易ではありません。
デジタル化の2つの側面と表現しましたが、実はこの2つは密接に関連しています。デジタル化が生み出した環境変化に対応し、企業が生き残っていくためにはDXが不可欠になっているのです。“DX or Die:DXの推進か企業の死か”という極端な意見まであります。

中小企業でのDX取り組みに必要な点

安価で高機能のWebサービスやシステムの登場により、中小企業でもデジタル化に容易に取り組めるようになりました。導入費用や操作面でも導入に向けたハードルはずいぶん下がりました。
しかし、DXへの取り組みは容易ではありません。DX推進には企業の変革が不可欠ですので、デジタル化の延長上には実現出来ません。
DXの推進には、
1. 企業がめざすビジョン、ビジネスモデルを構築し、社内で共有する。
2. それを実行するための戦略を立案し、方向を示す。
3. 実施のための組織とそれを担う人材確保・育成を進める。
このような活動が必要となります。

図:中堅・中小企業のDX実現に向けたプロセス

出典:「中堅・中小企業向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き2.0」、経済産業省(2023)

デジタルガバナンス・コードは、中小企業がDXを推進する上で指針となります。DXへの取り組みは、ほとんどの企業にとって初めての試みですので何らかの指針が必要となります。先にも書きましたが、中堅・中小企業においてもデジタル化への取り組みは進んでいますが、デジタル化の延長上にDXは実現できません。

京都での中小企業デジタル化への取り組み

京都では、2020年:京都市「中小企業等IT利活用支援事業」、2021年・2022年:京都市「中小企業デジタル化推進事業」注)を通じて、500社以上の中小企業がデジタル化に取り組んできました。今年:2023年も百数十社の中小企業がデジタル化に取り組んでいます。

新たなWebサービスを活用した業務の効率化・省力化への取り組み、Webサイトの構築を通じた顧客接点の拡大、新規事業の立ち上げなどに取り組んできました。

これだけ多くの中小企業がデジタル化に取り組んでいることは画期的なことです。ITコーディネータ京都は専門家派遣を通じて、これらの事業に関わり地元中小企業のデジタル化を支援してきました。

また、IT経営カンファレンス京都(2020~2022)で、京都市「中小企業等IT利活用支援事業」、「中小企業デジタル化推進事業」の事例報告を行い、その成果の広報に努めてきました。

専門家による伴走支援の重要性

中小企業は、人材や資金面などで大企業に比べ経営資源の制約があります。他方で、経営者の素早い意思決定で環境変化に対応可能など、DXの推進にあたってのプラス側面も多く持っています。ただ、中小企業の経営資源だけで独力で行うのは難しい場合があり、その時に必要なのが外部の専門家による伴走支援です。

DXの伴走支援者には、デジタル(D)の知見に加えて、それ以上に経営改革(X)の知見が求められます。ITコーディネータは、中小企業のDX推進の伴走者として最適です。

DX推進の伴走支援は、最新のシステム導入支援ではありません。経営者の方に会社の未来を考えてもらい、将来のビジョンを実現するためのデジタル活用法を提案しながら、会社の変革を支援することに他なりません。

中堅・中小企業においても本格的にDX推進が課題となる今こそ、ITコーディネータの出番です。

【注釈】

注:京都市「中小企業デジタル化推進事業」:京都市の中小企業者のデジタル化を推進するため、専門家による経営課題、業務課題の分析、課題解決に向けたデジタル化計画の検討からシステム導入までの一連の事業を支援する補助事業です。2021年度から実施されており、今年度も含め3年間で約400社が支援を受けています。2020年度に実施された「中小企業等IT利活用支援事業」と共に、中小企業のデジタル化推進に大いに貢献しています。

【参考文献】

・経済産業省(2022)、「デジタルガバナンス・コード2.0」

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf

・経済産業省(2023)、「中堅・中小企業向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き2.0」

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/contents.html

注:NPO法人ITコーディネータ京都:コラムより引用

デジタルガバナンス・コード説明会に参加して ~中小企業のDX推進の課題~/藤原正樹 – ITコーディネータ京都