震災から6ヶ月 ~宮城県からのレポート~

■ 道半ばの復旧・復興
3月11日の震災から、はや6ヶ月になる。私が住む仙台市中心部は、震災の影響はほぼ見られなくなった。”復興と鎮魂”をテーマにし、8月6日~8日に開催された仙台七夕まつりは、震災前に近い205万人の人出があった。津波で壊滅した仙台空港は、7月25日から国内定期便が再開され、東北新幹線は9月23日から通常ダイヤに戻る予定である。
他方、津波の被害を受けた沿岸部は、がれきの除去が進まず、行方不明者の捜索も続いている。また、放射能汚染が復興活動の重い足かせとなっている。宮城県では、今回の震災後に人口が2万人減少したとのことである。一つの町が無くなったようなものである。ある町の小学校では、4月に400人ぐらい居た生徒が、夏休み前には200人になっていたとのことである。
このような現状の中で、沿岸部の自治体の方は、強い危機感を持って復興に取り組まれている。早く復興計画を示さないと、”町がなくなる”という危機感である。復興計画作りは、時間との戦いに入っている。復興計画が遅れたら、町から人がいなくなるのは明らかである。
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写真は、宮城県南三陸町(2011年8月6日撮影)

■ 産業復興に向けた取り組み
現在、私の所属する宮城大学では、ある町の復興計画に関わっている。復興計画案の作成から、町民会議や地域懇談会への参加など、支援内容は多岐にわたっている。そこで必要なのは、町の再建計画と共に産業復興の道筋を示すことである。今回の津波で、沿岸部に多く存在する水産加工業などは、壊滅的な被害を受けた。特に、宮城県北部沿岸部は、7割前後の企業が浸水し、地域の産業そのものが壊滅的打撃を受けた。
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津波被害を受けた沿岸部では、第1次産業である漁業・農業に関連する産業の比率が高いのが特徴である。今回、産業復興のモデルとして提案しているのは、ノルウエーの漁業、オランダの農業である。いずれも、高い生産性と国際競争力を持つ産業だ。ノルウエーは、疲弊産業であった水産業を、効率的で利益のあがる産業へと変貌させた。地形も三陸海岸とフィヨルドのように似ている。オランダは、農地の多くが海面下にあり、塩害と戦いながらも、世界第2位の農産物・食品輸出大国となっている。わずか10年余で集約化と生産性の拡大・増加を実現したオランダ農業は、津波被害を受けた沿岸部農地活用のモデルとなるだろう。

■ 情報支援の必要性
今回の震災では、情報の役割があらためて見直されるようになった。震災直後には、Twitterなどのソーシャルメディアが、安否確認や必要物資の調達などで威力を発揮した。私の大学でも安否確認や震災直後の情報発信は、TwitterやWikiなどで行なった。避難所などでは、リテラシーの問題でネットやPCが十分活用できない点が指摘されているが、被災地と支援者の情報交換には大いに役だったといえる。これからも、復興事業の中でITは不可欠な存在となるであろう。
また、私が訪問した自治体では、西宮市の方が常駐され、情報環境の整備に当たられていた。阪神大震災の経験を踏まえ、情報機器の導入状況に合わせて、段階的に適用範囲を拡大されていたのが印象的であった。被災地の情報支援においては、このような人的支援も不可欠である。
一点だけ課題を指摘しておきたい。
震災直後から、多くのITベンダーによる「東日本震災復興支援プログラム」が発表され、被災地では無償で多様なクラウドサービスが受けられるようになっていた。ところが、これらのサービスはあまり使われなかったようである。震災後の混乱した状況の中で、新しいシステムを活用するのは困難であったことは予想できる。新システムの習得に人手を割けなかったという事情も推測できる。今後の災害時のIT活用を考える上で、検討すべき課題である。

■ 長期的なつながりを求めて
被災地の産業復興に向けて、ITで何が出来るか?出来ることは多くある。一つの例を示そう。
被災地の事業主は、産業復興に向けた意欲は高いが、震災で多くの販売経路を喪失している。地元での販売だけでは限界がある。他方、首都圏など消費地では、消費を通じて被災地を支援していこうという多くの消費者が存在する。既存の流通においては、被災地の生産者と消費者がお互いに顔の見える取引を継続するのは困難である。被災地の意欲ある生産者と被災地を支援しようという消費者が、継続的に繋がる仕組みを準備すれば、被災地の産業復興につながる。
これを実現するために、現在、われわれが地元のIT企業と共同で進めているのが「東北復興型eビジネスモデル」である。
(図:東北復興型eビジネスモデル)
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従来のネットショップは、出店者と消費者が1対1でつながる一方通行の関係であったが、東北復興型eビジネスモデルは、被災地の生産者と消費地の顧客が集うコミュニティをベースとしたショッピングサイトをネット上に構築することが特徴である。被災地の生産者コミュニティと消費者のコミュニティが相互に連携することにより、継続的な被災地支援の取引関係(消費)を生み出すことを目的としている。さらに、旅行などを通じて生産者と消費者のリアルな接触を生み出し、被災地のリアルショップ(地元の店舗)の販売促進につなげることで、被災地全体の産業活性化を生み出す効果も期待できる。
震災からの復興はまだ始まったばかりである。震災直後は、ソーシャルメディアをはじめとする新しいタイプのITが、大いにその存在感を発揮した。ITの新しい可能性も見えてきた。これからの長期にわたる震災復興の中で、ITが重要な役割を果たすことを期待したい。

ITコーディネータ協会機関誌「架け橋」Vol.11より転載

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